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イングランド代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏インタビュー 「このワールドカップによって日本のラグビーは大きく変わる」

2019.09.14 Sat

いよいよワールドカップ開幕まであとすこし。今大会、ラグビーの母国・イングランド代表を率いるのが、前回大会で日本代表のヘッドコーチ(以下HC)として南アフリカを破る快挙を演出したエディー・ジョーンズ氏だ。ラグビー界屈指の名将が見る日本代表の現在地、そして日本で初開催されるラグビーワールドカップの意義とは?

───まずはエディーさんの目から見て、今回のワールドカップが日本で開催される意義はどのようなところにありますか?

非常に多くの意義がありますね。何より日本代表チームのレベルを飛躍的に向上させることができる絶好の機会ですし、また多くの国々に日本のラグビー文化そのものをアピールできるという点で大きなメリットがあると考えています。日本は現在のところ“ラグビー大国”とは言えないものの、このワールドカップ開催によって世界のラグビーシーン全体における位置づけをぐっと高めることができるでしょう。

───4年前の前回大会でエディーさん率いる日本代表が南アフリカを破る快挙を成し遂げたことが今なお記憶に新しいですが、今回イングランド代表HCとして日本に“凱旋” するにあたってどんな思いがありますか?

日本が今大会のホスト国であることを私としても非常に誇りに感じていますし、そこに今度はラグビーの母国イングランドの代表チームを率いて臨めることにワクワクしています。強豪国を率いる重圧というのはもちろんありますが、プレッシャーも含めて楽しみたいと思っていますよ。HCとしてチームの方針をここで明かすわけにはいきませんが私たちが今大会ですべきことはすでに明確になっていますし、勝利できると確信しています。ですから、日本のファンの皆さんには、日本代表だけでなくぜひイングランド代表も応援してほしいですね。

───イングランド代表はワールドカップ優勝国の1つでもある世界屈指の強豪ですが、今大会はどのような戦いを見せてくれますか?

パワーのある強力なフォワード陣を擁しながらも非常に秩序があって組織力の高いチームに仕上がっていると自負していますし、また得点源となるウィングにとても優秀な選手たちが揃っています。スピードとインテンシティ、戦術理解力をバランスよく備えたオーソドックスなチームであり、かつパフォーマンスの一貫性もあります。また、伝統的にイングランドの選手たちは、プレッシャーがかかればかかるほど良いパフォーマンスを発揮できる“ブルドッグの精神”を持っているので、そのあたりにもHCとしては期待しています。

Photo/Getty Images

───次に日本代表についてお聞きします。外から見て、エディーさんが率いていた頃のチームからどのように進化していると感じますか? 現在の日本代表のストロングポイントなどもエディーさんなりの視点で挙げてください。

私が指揮していた頃はかなり組織を重視したシステマチックなチームでしたが、現在の日本代表は当時とはまた異なる特性を持ったチームに仕上がっているのではないでしょうか。象徴的なところで言うと、最終ラインからのキックの応酬などが増えるオープンな展開、私はそれを“混沌としたゲーム”と呼んでいますが、それにもしっかり対処できるユーティリティー性の高いチームになったと感じています。しかしながらワールドカップを勝ち抜いていくためにはさらなるフィジカル強化とディフェンス面の改善が求められるでしょう。さきほど話したカオティックな試合展開というのはそれだけスペースも生まれやすいので、そこをきちんとフォローできる守備や1on1のタックルの精度を高めていかなければなりません。

───前回大会、日本代表はあれだけの戦いを見せながら予選プールを突破することができませんでした。それだけワールドカップはレベルが高く、勝ち抜くことが困難な大会だと思いますが、日本代表がその壁を破り、目標に掲げるベスト8に進出するためにはどのような戦いが必要ですか?

何よりパフォーマンスの一貫性ではないでしょうか。日本と同じ予選プールAにはロシア、アイルランド、サモア、スコットランドが入っていますが、気を抜ける相手は1つもありません。とくにアイルランドは今最も強いチームの1つと言えます。試合を重ねながら負傷者もそれなりに出るでしょうし、それぞれの試合でいかにレベルを落とさず高いパフォーマンスを維持できるかがポイントになってくるでしょう。開催国として決勝トーナメントに進出しなければいけないというプレッシャーものしかかってくると思いますので、選手たちには強いメンタリティーを持って試合に臨んでほしいですね。

───日本では今回のワールドカップをきっかけに初めてラグビーの国際試合に触れる人も多いかと思います。新しいファン層に向けて、「ここさえ押さえておけばラグビー観戦がより楽しくなる」といったようなポイントを教えてください。

まず注目していただきたいのは、出場20カ国すべてに、各国ならではのプレースタイルがあり、国の特徴や国民性が表れるところ。例えばニュージーランドは非常にスピーディーなゲームを展開する伝統がありますし、南アフリカはラグビーそのものが実にパワフル。そしてそれぞれの国から個性豊かなラグビーファンたちが日本に詰めかけて情熱的に応援するはずです。しかし彼らは決して自国だけを応援するのではありません。素晴らしい例をひとつ挙げますね。2015年に日本が南アフリカに勝利した後、混雑していて帰りの電車になかなか乗れずにいた日本のファンの方たちに対して、南アフリカのファンたちが拍手をしながら彼らを優先的に電車に乗せたというエピソードがあります。これこそがラグビー特有の「ノーサイドの精神」であり、選手のみならず応援する人たちの間にもしっかり浸透しています。サッカーではあまり見られない光景ですよね。

───そこは今回、ホスト国として、日本のファンが最も心がけなければいけないところだと感じます。

日本人の「おもてなし」の心はラグビーというスポーツにとても合っていると私は思っていますし、今回のワールドカップで素晴らしい環境を作ってくれるのではないかと期待しています。ただひとつ、懸念点があるとしたらパブが少ないことでしょうか(笑)。おそらくイングランドからは5万人近いラグビーファンがやってくるはずなので、彼らのためにも特設のパブをたくさん作っていただかないと(笑)。それは冗談として、海外からやってくる多くのファンたちは日本のホスピタリティにきっと満足するはずです。日本の皆さんにとっても、来年の東京オリンピックに向けての良いリハーサルになるのではないでしょうか。

───このワールドカップは、エディーさんにとってもラグビーの母国に久々の優勝をもたらすための新しい挑戦だと思いますが、ご自身の中で常にチャレンジスピリットの原動力になっているものとは?

一言で表すなら、美しいラグビーを見せたいという思いでしょうか。私にとってラグビーの試合はオーケストラのようなもの。つまり選手全員が相乗的に動いてこそ、美しい音楽を奏でられるのです。例えば弦楽器がうまくいっていないとか、ドラムの音だけが大きすぎたりすると、プレーヤー個々の能力が高くてもオーディエンスを感動させられるようなパフォーマンスを見せることはできません。だから私はきちんとすべてのプレーヤーを把握するよう常に心がけながら、チーム作りをしています。美しい音楽を奏でられるポテンシャルを持つチームに、きちんと“奏でさせる”ことが私の使命だと思っています。

───最後に、今回「ハンティング・ワールド」からワールドカップに合わせてエディーさんとのコラボレーションバッグが発売されましたが、このプロジェクトにはどんな思いを込められたのでしょうか。

まずハンティング・ワールドというブランドが一貫して“旅”をコンセプトにしているところに、かねてより私自身がすごく共感をしていたことからコラボレーションが実現しました。今回作らせていただいたバッグは、このブランドらしい伝統的かつ洗練されたスタイルにラグビーボールをモチーフにしたディテールやデザインが巧みに取り入れられており、またウィークデーに仕事で使えて、週末にはラグビー観戦にも行ける実に機能的なコレクションに仕上がっていますね。私ももちろん、このバッグを携えて日本に行きますよ。

ラグビーワールドカップ開幕に合わせて、この9月に発売された「バチュー×エディー・ジョーンズモデル」はキャリーオール(左)とトート(右)の2タイプ。ともにハンティング・ワールドのスタンダードコレクション「バチュー・サーパス」の代表モデルをベースにエディー氏本人が監修。クラシックなラグビーボールをモチーフにしたレザーの編み込みのディテールや楕円形のレザーパッチが特徴で、内側にはエディー氏の「挑戦心」を表すビビッドなレッドのライニングが施されている。各¥190,000(税抜き)/ハンティング・ワールド(ハンティング・ワールド帝国ホテル店 TEL:03-3501-7080)
INFORMATION: PROFILE:エディー・ジョーンズ1960年生まれ、オーストラリア出身。選手時代のポジションはフッカー。96年に東海大学ラグビー部コーチから指導者キャリアをスタート。その後、スーパーラグビーのブランビーズ、オーストラリア代表のヘッドコーチや南アフリカ代表のチームアドバイザーなどを歴任し、2011年に日本代表ヘッドコーチに就任。2015年ワールドカップでは南アフリカ代表に歴史的勝利を収めた。現在はイングランド代表ヘッドコーチを務めている。
Photos:Kai Tokuhara Composition&Text:Kai Tokuhara