虹を蹴る 虹を蹴る

第六回「チーム崩壊の危機」

2019.09.13 Fri

 しかし、本当に遅い。
 カツオと美代子がいなくなった白虹寮は、監視と管理が完全にザルだと思われているのだ。消灯時間をまわってもなお、逸哉は白虹寮に戻らなかった。インコのラグ男が、籠の中でこっくりこっくり眠っている。
「……あの馬鹿者め」
 瑞希は立ち上がって、月明かりの照らす夜の世界へと出た。
 外に出ると、途端に外気の冷たさを肌に感じた。昼間あれだけ暑かったのが、嘘みたいだ。昼と夜とでは、二月近く季節が違ってしまったようだ。山並みを流れるひんやりとして澄んだ空気が、けれど今は心地いい。
 ――逸哉の行き先は予測がついていた。
 あの夜、偶然逸哉に会った時にはなにも感じなかった。でも、今はわかる。逸哉はきっと、一人で練習するために毎夜出歩いているのだ。朝練に一人で励む、龍之介と同じく。
 上着を肩に引っかけて、瑞希はグラウンドへ向かう坂道を駆け上がった。

→第七回「真夜中、いつも一人で」に続く。

ページ: 1 2 3 4

INFORMATION:

小説『虹を蹴る』全編は、集英社オレンジ文庫にてお読みいただけます。

『虹を蹴る』 (集英社オレンジ文庫)
せひらあやみ著  花恵ヨシ装画
http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086802740

冒頭試しよみ漫画はこちらhttps://r.binb.jp/epm/e1_122670_18092019121422/