虹を蹴る 虹を蹴る

第八回「どこまでもきみを追いかける」

2019.09.27 Fri

 桃工との二度目の練習試合当日は、嵐のような強風が吹き荒れていた。猛烈な風が、瑞希の髪を何度も浚った。坂の下にある野球場から砂塵が舞い上がり、渦を巻きながらこちらを襲ってくる。空気の流れがはっきりと目に見えるようだった。
 上空に浮かぶ重い雲が、風に押されてぐんぐん流されていく。わずかに雨粒が降ってきたのは、試合開始五分前のことだった。
「……うわあ、酷い天気ですね。今日って、試合中止になっちゃうんでしょうか」
「大丈夫、雨天決行ですよ。雷以外では中止しないのがラグビーです」
 強風も雨も意に介さず、ヤスシは微笑んで頷いた。
「ラグビーは、自然と共にある競技なんです」
「本当に……、厳しいスポーツなんですね」
「でも、魅力的です。観ているだけでも面白いでしょう」
「はい」
 素直に瑞希は頷いた。その反応にちょっと嬉しそうにヤスシは微笑んで、それから顔をしかめた。
「……けど、この天気は桃工に有利に働きますね」
「え、どうしてですか」
「雨粒とか風で、手元が滑りやすくなるんですよ。今日はたぶん、ボールを前に落とすノックオンが多くなるでしょうね……。どういうことかわかります?」
「フォワード勝負ってことですか」
「そういうことです」

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INFORMATION:

『虹を蹴る』の物語はまだまだ続きますが、楕円球LOVE!上での連載はこの回で終了です。
小説『虹を蹴る』全編は、集英社オレンジ文庫にてお読みいただけます。

『虹を蹴る』 (集英社オレンジ文庫)
せひらあやみ著  花恵ヨシ装画
http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086802740

冒頭試しよみ漫画はこちらhttps://r.binb.jp/epm/e1_122670_18092019121422/